こんにちは、管理人のゆーうつ(@NZMBooKs)です。
２０２０年はかつてなくAudibleが充実した一年でした。
新たに私のライブラリーに加わった作品は２０タイトル、セール時に購入して積ん読状態のタイトルもあるので、全部聞いたわけではないですが、たくさんのタイトルを聴けました！
今日は２０２０年のおすすめ作品として、２０２０年上期の直木賞受賞作品である馳星周『少年と犬』をご紹介します！
馳星周『少年と犬』
２０２０年の直木賞は馳星周さんの『少年と犬』でした。
２０１１年、震災後の仙台から始まる一頭の犬にまつわる連作です。
６つの短編が折り重なりながら、最後の「少年と犬」へと繋がっていきます。
人という愚かな種のために、神が遣わした贈り物
この印象的なキャッチコピーの通り、犬と人間との生活のなかにある機微を捉えた傑作です。
現状の生活に行き詰まった登場人物たちに一頭の犬が変化と希望をもたらします。
『少年と犬』あらすじ
２０１１年、東日本大震災後の仙台、震災で仕事を失った和正はコンビニで一頭の犬と出会います。
ガリガリに汚れた犬は野良犬のようでしたが、首輪には多聞という名前がありました。
和正は多聞を車に乗せて連れ帰ります。
認知症の母と母を介護する姉に、無職の和正。
多聞はそんな家族にやがて「守り神」として、良い変化の兆しをもたらしました。
そんな中、和正は地元の先輩からギャラのいい仕事を紹介され、窃盗団の運転手を務めることに…。
『少年と犬』感想
「男と犬」を皮切りに、小説は６つの短編が連なりながら展開していきます。
それぞれの章で人間味あふれる登場人物たちと犬との関わりが描かれていきます。
全編を通して感じられるのは、犬の語らなさと通じ合いです。
当然ですが、犬は何も語りません。どこからやってきたのか、どこへ向かおうとしているのか、知ることはできません。
一緒にいて楽しいのか。私に拾われて幸せだったのか。
特に章と章の切れ目は読者でさえ、その間の犬の同行を知ることはできません。何も語らない犬の、空白の時間を突きつけられます。
あくまでも登場人物の人間の目と感情を通してのみ、犬を知ることができるのです。
なのですが、登場人物たちは犬と心が通っていると信じられる瞬間を持ちます。その存在に救われる時間が訪れます。
各章の主人公たちは、誰しも人生に行き詰まり、心に隙間があるように感じられます。犬は、その隙間を埋め、離れがたい存在となっていきます。
登場人物はそれぞれに背景をもちながら、社会と関わっています。それが作品に深みをもたらしているのだと思います。
私のお気に入りは、震災後の仙台で窃盗を繰り返すフィリピン国籍のミゲルという男です。悪としか言いようのない生業を持つ男にも、犬は平等に接します。
『不夜城』をはじめハードボイルドな小説で知られる馳星周さんの作品らしい「悪」について考えさせられる人物です。
最後に犬は誰と出会うのか？
ぜひ、全ての犬好きと、あるいは犬好きが側にいる人に読んで欲しい作品です。
『少年と犬』Audible版
私は本作品をAudibleで聴きました。
「ONLY FROM audible」というAudibleオリジナル作品としてリリースされました。
各章の登場人物のやるせなさや、気持ちの起伏が丁寧に表現されています。
ナレーターはアニメや吹き替えで活躍する声優の桑原敬一さん。爽やかながら深みのある朗読を聞かせてくれます。
再生時間は８時間57分。
馳星周『少年と犬』
Audibleはいつでも聴ける手軽さが人気です。初読はもちろん、書籍版で読んだ方の再読にもおすすめです。
『少年と犬』書籍版
書籍版は紙の本と電子書籍が販売されています。
『少年と犬』紙の本
ハードカバー版は遠くを見るめる犬のイラストで、思わず見入ってしまう装丁デザインです。犬好きの友人や家族への贈り物にもいいかもしれませんね。
『少年と犬』電子書籍
電子書籍（Kindle）でも販売されています。
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オーディオブックとは本を読み上げる朗読サービスです。 本を「読むこと」から「聴くこと」へ、読書の可能性を押し広げる革新的なサービスです。 今日はオーディオブックであるAudible（オーディブル）についてご紹介します。 A[…]
ねづ店長のワンポイントアドバイス
犬はとても多くのものを与えてくれるね。犬が与えてくれるものについて、受け取る人間側の心の機微を描いた名作だよ。