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『1Q84―BOOK1〈4月-6月〉前編』 村上春樹
作品の感想メモ
2009年以来、14年ぶりの再読。
冒頭の青豆が高速道路を降りる場面は印象的で鮮明に覚えていた。物語の筋よりも、いくつかの場面が記憶に焼きついている。
2015年に『職業としての小説家』が発表されているので、「空気さなぎ」にまつわるエピソードは文学論としても読めて、今読むとかえって興味深かった。
2009年当時は作品のテーマを古く感じたが、SNSやYou Tubeを通して陰謀論が拡散される今は、95年のオウム真理教の事件に題材を遡るこの作品は今こそ返って力をもってきているのかもしれない。
あれ、こんなに面白かったけ?と久しぶりに読んで思う。
天吾と比べると、青豆とふかえりという二人の女性にはそれぞれ(ある種の)完璧で理想的な女性像が感じられ、この作品を好きになるかどうかは、この二人をどう受け入れるかで分かれるように思う。
面白いんだけど、どこかでもどかしさを感じてしまうのは、当時も今も変わらないし、この感じってまさに村上作品を読むとあるやつだなと。
オーディブル版への感想
杏さんと柄本時生さんという役者を起用し、青豆と天吾という男女の章が交互に語られる本書の構成もあり、ナレーションというよりはそれぞれが青豆と天吾を演じているのを楽しむ作品でもある。
杏のナレーションは青豆の冷静な殺し屋としてのキャラクター部分が際立って感じる。
柄本時生のナレーションは、数学講師をしながら小説の新人賞に応募を続け、人妻と不倫関係を続ける天吾の地に足つかない性格を感じた。
公式サイトのレビューはひどいようだけど、それぞれキャラクターに一つの解釈があって、これぞオーディブルの楽しみだなって思う。
再生速度は主に1.5〜2.7の間で再生しました。
あらすじ
公式サイトより引用
ひょっとしたら、と彼女は思う、世界は本当に終わりかけているのかもしれない。 夜空に不思議な月が浮かび、「リトル・ピープル」が棲む1Q84年の世界……深い謎をはらみながら、主人公・青豆と天吾の壮大な物語(ストーリー)が始まる。 1Q84年――私はこの新しい世界をそのように呼ぶことにしよう、青豆はそう決めた。Qはquestion markのQだ。疑問を背負ったもの。彼女は歩きながら一人で肯いた。好もうが好むまいが、私は今この「1Q84年」に身を置いている。私の知っていた1984年はもうどこにも存在しない。……ヤナーチェックの『シンフォニエッタ』に導かれ、主人公青豆と天吾の不思議な物語がはじまる。
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ねづ店長のワンポイントアドバイス
2009年の年間ベストセラーで1位になって、社会現象にもなった作品。当時はたくさんの言説に溢れてノイズも多かったから、今のほうが落ち着いて読めるかもね。