映画『女王トミュリス 史上最強の戦士』感想とあらすじ|紀元前にペルシア王を破ったマッサゲタイの女王

先月からヘロドトスの『歴史』を読んでいます。
(前回の記事はこちら

今はようやく中卷に入りました。

『歴史』を読んで感じたことなど書いています。

先日、それに関連して『トミュリスの女王 史上最強の戦士』という映画を見ました。

それで、その映画が最高だったので、今日はそのことについて書いていきます。

せっかくなので映画『トミュリスの女王 史上最強の戦士』にふれつつ、『歴史』の中で語られるマッサゲタイのトミュリスについて書いていきます。

トミュリスとは?


トミュリスは紀元前530年頃の人物です。

現在の中央アジアのカスピ海東岸にいたマッサゲタイ族の女王でした。

カスピ海東岸というと、現在はカザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンが接しています。

カスピ海の北から東にかけては、現在でも大草原(ステップ)が広がっているようです。

GoogleMapで見ると、西側や南側に緑が多いのと比べて一目瞭然ですね。

『歴史』ではこのように描写されています。

このいわゆるカスピ海の西方を劃するのはコーカサス山脈であるが、東方には広漠として視界も及ばぬ大平原が連なっている。

ヘロドトス『歴史』204節

『歴史』の中のトミュリス


トミュリス及びマッサゲタイ族の物語は『歴史』では上巻第一部204〜216節で語られます。

トミュリスはヘロドトスからみても一世紀ほど前の人なので、あくまでも伝聞としての語りです。

トミュリスはマッサゲタイという遊牧民族を女王として率いて、史上初の帝国となったアケネメス朝ペルシアのキュロス2世をやぶります。

当時のキュロス二世はメディア王国、リュディア王国、エラム、新バビロニアと古代オリエント世界に栄えた数々の王国を征服し、空前絶後の帝国を築き上げていました。

それから中央アジアの征服を開始します。

当初、キュロス二世はトミュリスを妻として迎えることで、マッサゲタイの国を併合しようとしますが、トミュリスはこれを拒みます。

当時マッサゲタイでは、夫に先立たれたトミュリスという名の女が女王であった。キュロスは使者を通じ、自分の妻に迎えたいと称してこの女王に求婚した。しかしトミュリスは、キュロスが求めているのは自分ではなくて、マッサゲタイの王位であることを見抜き、彼の来訪を拒絶したのである。キュロスは計略が成功せぬのを見てとると、アラクセス河畔に兵を進め、公然とマッサゲタイ攻撃の準備をはじめた。

ヘロドトス『歴史』205節

キュロス二世は計略でマッサゲダイを陥れ、多数の死者と捕虜をだしました。

捕虜の中にはトミュリスの息子のスパルガピセスもおり、計略にかかった自分を恥じて自決してしまいます。

トミュリスはキュロスとの全面戦争を決意し、ヘロドトスに”外国人同士が戦った合戦の数ある中で最も激烈なもの”と評されることになる戦いが始まります。

両軍は距離を置いて互いに弓矢で応酬していたが、やがて矢を射尽すと、槍と短剣をもって激突し混戦となった。長期間にわたって戦い互いに相譲らず、双方ともに退こうとしなかったという。しかし遂にマッサゲタイ軍が勝ちを制し、ペルシア軍の大部分はここで撃滅され、キュロス自身も戦死を遂げた。

ヘロドトス『歴史』214

映画『女王トミュリス 史上最強の戦士』

映画はトミュリスの幼少期から始まります。

マッサゲタイの王の娘として生まれたトミュリスですが、内部の反乱で父親は殺され、一部の身内や臣下と姿を隠しながらの生活を送ります。

トミュリスは復讐を心に深く誓い、戦士としての鍛錬もかさね、新しい仲間を得て復讐を果たします。

トミュリスは女王に返り咲き、近隣の遊牧民族とも良好な関係を築きました。

強い旦那と結婚し、子宝にも恵まれ、順風満帆な生活に入った頃、キュロス二世が中央アジアへの野望を抱きます。

キュロス二世はマッサゲタイに使者を送り、トミュリスの夫と長男を首都へ招いて恭順させようとしますが、うまくいかず二人を計略にかけて殺します。

それからマッサゲタイへの進撃を開始、トミュリスがこれを迎え撃ちます。

映画の魅力は歴史の名場面を描いたというだけでなく、女戦士として世界史に名を残すトミュリスの人物像を描き出しています。

自分の身も国も自分たちで守らなくてはいけない時代にあって、奪われるときの痛み、打ち勝つまで冷静にじっとこらえるような表情が印象的です。

個人的に感じた映画の魅力です。

  • 中央アジアの景色が美しい
  • 神話的な描写の美しさ
  • 合戦の描写が大迫力
  • 装身具や村、町から紀元前の雰囲気が伝わる

トミュリス役のAlmira Tursynはカザフスタン人で、もともとはモデルとして活躍していたとか。

この映画が初主演のようです。インスタがありました。

カザフスタンの景色が美しい


UnsplashIvan Oleynikovが撮影した写真)

映画はカザフスタンで製作され、、監督もカザフスタン人のアカン・サタイェフ。

ひたすら静かで広大で、それゆえの不気味さをたたえた草原の景色と、そこから生まれる文化や風習が丁寧に撮られています。

砂漠とか草原の景色が好きな人なら、その映像美だけでもずっと見ていられると思います。

同監督は他にも『ダイダロス 希望の大地』など、カザフスタンを舞台の映画をとっています。

Wikiの英語を参照する感じだと、一部では批評や批判を生んだようです。

  • 物語がヘロドトスの記録によっている
  • マッサゲタイ人はイラン語群の言語を話していたが、カザフスタン人の俳優(チュルク語族)で固まっている。
  • カザフスタンの国威発揚、政治的な動機が大きいとみられている

古代オリエント世界の歴史や雰囲気を知るのにも良いですし、映像美を楽しむこともできるし、深く見ていけば現代のカザフスタンや中央アジアのことも知れる映画です。

気になっている方はぜひ、一度ご覧ください。

映画トミュリスの視聴方法

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月額500円でプライム・ビデオの見放題のほか、アマゾンの各種サービス使えるので、まだの人は登録おすすめです。
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DVDもあります。

ヘロドトス『歴史』も面白いので、この機会に是非。
トミュリスのエピソードは上巻です。

ねづ店長のワンポイントアドバイス

歴史映画を見ることで理解が深まったり視野が広がるよね。トミュリスは歴史上の人物としても、とても魅力的だから生き方の参考にしてみては?