こんにちは、管理人のゆーうつ(@NZMBooKs)です。
2020年はかつてなくAudibleが充実した一年でした。
新たに私のライブラリーに加わった作品は20タイトル、セール時に購入して積ん読状態のタイトルもあるので、全部聞いたわけではないですが、たくさんのタイトルを聴けました!
今日は2020年のおすすめ作品として、2020年上期の芥川賞受賞作品である遠野遥『破局』をご紹介します!
遠野遙『破局』
2020年上期の芥川賞は二作品が受賞しました。そのうちでAudibleで作品化されているのが遠野遥さんの「破局」です。
デビューからわずか二作目、平成生まれによる初めての受賞、そして俳優のような凛々しい佇まいで話題になりました。
受賞発表後しばらく時間が経過してからですが、父親がBUCK-TICKのボーカルである櫻井敦司さんであることが公表されたのも記憶に新しいですね。
『破局』あらすじ
名門大学の法学部に所属する主人公の陽介は、公務員試験の就活の真っ只中です。
コーチとして母校で高校ラグビーを教え、政治家志望の意識高い彼女をもち、お笑いサークルに所属する友人を持っています。
ある日、お笑いライブの新歓で出会った新入生の女の子と仲良くなり、やがて彼女と別れてその子と付き合いだす…。
『破局』感想
あらすじだけを聞くと、とても平凡な青春小説に聞こえるかもしれません。
ところが、作品の出だしから、この主人公からとても強い違和感を感じるはずです。
いい人であること、きちんとしていること、向上心を持つこと、安定していること、今の社会で求められているであろう規範を、主人公はとても強く意識しています。人生の目標や他者に対しては無意識に強い規範を求め、時にそれは思考停止ともいえるレベルで起こります。
ところが、ラグビーや恋など肉体に関わる部分においては能動的な衝動をあらわします。
やがてそれが互いに絡み合ってゆき、ある破局をもたらす…のですが、この小説の魅力はこうした構造よりも、文体そのものに表現されているなと感じます。
サイコパスにも感じられる淡々とした語り口は、余計な修飾を省き、目の前で起こる出来事の描写と、陽介の自己分析的な心理描写を行きつ戻りつしながら展開していきます。
その象徴的な描写が、冒頭の後輩へのラグビーの指導シーンです。
ラガーマン同士のぶつかり合い、陽介は後輩を弾き飛ばしながらアタックを決めにいきます。
筋トレと勉強と自慰という一人で行える行為と、ラグビーとセックスという他者との強い関わり合いの行為を往復しながら物語は進んでいきます。
どのような破局を迎えるのか、破局はいつから始まっていたのか。
客観的で自己分析的で意識が高い、平成という時代の病理が巣食ったような物語だなと思います。
作家は夏目漱石の文体に強い影響を受けたそうです。
『破局』Audible版
ナレーターはベテラン声優の加藤将之さん。作品世界を際立たせる低く乾いた朗読を聞かせてくれます。
再生時間は4時間21分。
遠野遥『破局』
Audibleはいつでも聴ける手軽さが人気です。初読はもちろん、書籍版で読んだ方の再読にもおすすめです。
『破局』書籍版
書籍版は紙の本と電子書籍、そして受賞作品掲載号である文藝春秋が販売されています。
『破局』書籍
物語を暗示するような書影が印象的です。
『破局』 KIndle版
Kindle(電子書籍)でも販売されています。
『文藝春秋』九月特別号
芥川賞受賞作品として、文藝春秋九月特別号にも掲載されました。
私はAudible版とこちらを購入しました。
受賞時の著者インタビューである「KingGnuと夏目漱石」も必読です。
同時受賞の高山羽根子さんの作品も掲載されています。
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ねづ店長のワンポイントアドバイス
芥川賞受賞作品にはその時代の空気感が宿った作品が多いね。読み手の人生と、なにかしらシンクロする描写があるんじゃないかな。